コンペに敗れた試作機、実戦に間に合わなかった戦闘機、数回しか飛ばなかった実験機。IFの物語を思い浮かぶような儚い飛行機にはロマンを感じてしまう。YF-23もそのひとつ。
国立空軍博物館に展示されているのはYF-23の1号機、チャコールグレーに塗られたS/N 87-800(PAV-1) Spiderである。なのに、なぜかノーズギア扉の内側には"GRAY GHOST"と書かれている。機体にも搭載エンジンYF119のメーカーであるP&Wのロゴが描かれている。
こちらがロサンゼルス郊外でモスボール状態に保管してあるYF-23の2号機、S/N 87-801(PAV-2) Gray Ghostである。PAV-1より明るい色に塗られているのがGrayの命名の由来である。だが、写真をよくよく見るとこちらのノーズギア扉の内側には"SPIDER"と書かれているのだ。どこかで部品が入れ替えられてしまったのだろうか。経緯も意図も全く分からず混乱してしまった。
ちなみにこの2号機はフェンス越しに眺めることしかできない。
この飛行機の魅力は後部につまっていると言って過言ではない。水平尾翼と垂直尾翼を兼ねるV尾翼と、エンジンの排気を機体下面に曝さないための独特のノズル形状。自分の撮った写真を見返してみたら、後ろ寄りから撮った写真ばかりであった。
展示されているエンジンはPAV-2 Gray Ghostに搭載されていたGE製YF120。推進系は詳しくないのではるねーさんに解説してもらおうと思う。
ATF計画で後のF-22に敗れたYF-23の2号機「グレイゴースト」のエンジン後方視。2号機エンジンはGEのYF120。AB下流は全て耐熱タイルで保護し、尾翼で排気を隠す構造等ステルス重視したため推力偏向は無くスロートは上部フラップで調整する。フレームホルダは最新のラジアル方式
— はるねー (@har_u) 2015年11月9日
このYF120エンジンはその他にF-22にはない可変サイクルというターボジェット-ターボファンの変形モードがある。YF120派生型式はまちまちで試作であるエンジンには複合材、二次元ノズル、ファンに特殊な構造を採用していたりする。構造が複雑なのとかが原因でPW社に負けて不採用。
— はるねー (@har_u) 2015年11月9日
GEはその後のF-35のF136エンジンでも負けて新規ものミリタリーは散々。PW社のF135にも不具合が連発しまくって議会ではGEか、という話もあったらしいけどPW社ががんばって解決。今に至る。
— はるねー (@har_u) 2015年11月9日
ステルス機においてはRCSや赤外線放射の理由により通常の冷却手段が使えないため、エンジンは実は重要な冷媒である。そのためGEはAdaptiveサイクルという新しい概念のエンジンを目下研究中(イマココ)
— はるねー (@har_u) 2015年11月9日
非常に勉強になる。