迎え角30deg.

上向きでも飛んでいかない日々。前に進むだけで精一杯。

人力飛行機のアクシデント

人力飛行機の飛行距離で世界記録更新を狙っていた日本大学のチームが、先日、試験飛行の際に滑走路脇の木に衝突し機体を大破させてしまうということがありました。
「記録飛行中止」@参地下かもめ [ http://mowexx.blog.shinobi.jp/Entry/30/ ]
残念なことに記録飛行計画は頓挫。

これを受けて、2ちゃんねるの鳥コンスレッドでは、「木にぶつけるぐらいなら落とせばいい」とか「クルーが機体を掴めば良かったのでは?」と話題になりました。実はグランドクルーが機体をつかんでしまったというのを間近に見たことがあり、手元に動画があったのでYouTubeにアップしてみました。
1本のフライトを横から撮ったものと、後から撮ったものです。

ご想像の通り、急減速した機体は揚力を失って急降下しています。このときは結構な角度で前輪から落ちましたが、フレーム・前輪とも破損はなく無事でした。最近の機体のようにフレームが低くプロペラ径が大きい場合は、プロペラが地面を叩いてたかもしれません。
落ちたところがアスファルトだったため衝撃は大きかったですが、上手く車輪が転がって助かったと言えるかもしれません。土だった場合はそのまま突き刺さって前回りだったかも。

人力飛行機が土に刺さって急停止した場合。

わりかしメジャーなインシデントかと思いますが、これも動画を。
悪化すると前転したり、フレームが破断したり、テールが折れたりします。
てか、この速度で置いてかれるなよ・・・。

今年の鳥人間コンテストに出場した社会人チーム、COOLTHRUSTさんは試験飛行中に主翼の取付金具が破損して機体を大破させるアクシデントに見舞われました。主翼の回転を抑える(おそらくリアスパー近辺の)金具が破損して主翼が回転し、空気力or捩りモーメントにて主翼桁が破断しています。
「第5回テストフライト結果について」@人力飛行機製作集団 Coolthrust のページ

同様のトラブルが起き機体が大破するという経験を過去のチームがしており、代々伝えられています。この通称「主翼だけ飛んじゃった事件」は、翼胴結合金具の主桁側が破損し、名の通り主翼だけ飛んでしまったというアクシデントです。

破損した金具の状況から、接着不良が原因だったと推定されています。

鳥人間コンテストに出場しているような大学のサークルで人力飛行機を製作している場合、代替わりが常に問題になります。技術の断絶、経験の断絶、人と人のつながりの断絶などいろんな面で継承し損なってしまうことがあります。
この中で大きな損失となってしまうのが事故の経験の断絶ではないでしょうか。

このような過去の出来事を整理して現役に伝えるのはOB/OGにしかできない役目だと思います。
もちろん、OBが過去の経験を英雄譚のように語って、頭ごなしに現役に「あーしろ、こーしろ」と指示を出すだけでは、反発を受けて上手くいかないでしょう。その辺は自分が現役だった頃を思い返して伝えなければなりません。現役は現役で「あの代とは違うんだ」などと意味のない自信を持たずに、過去の事故からどのような教訓が得られるのか、今のチームにはどのように反映できるのかということを真剣に考える姿勢を持ってもらいたいものです。

昨年度は有力チームでの試験飛行のトラブルが(2ch的に)よくピックアップされた年でした。このような他チームの情報も積極的に吸収するという意識を皆が持つようになると鳥人間界・人力飛行機界がより発展していくのかなとビデオを見返しながら思いました。