迎え角30deg.

上向きでも飛んでいかない日々。前に進むだけで精一杯。

H2Bロケット打ち上げ見学記[2/2]

7月21日
レンタカーの中で目を冷ますと外はだいぶ明るくなっていました。ぼちぼち他の人も集まり始めている感じ。ベストポジションに三脚などを広げただひたすら待ちます。あと5時間くらい。
他の場所の人の集まり方がどうだったのか良く分かりませんでしたが、この場所はT-3〜4時間くらいに来れば、三脚広げてのカメラの場所取りもまだまだ余裕でした。

左上の方に射点が見えます。射点から直線距離にてだいたい4kmくらい。音は10秒以上遅れてくるはずです。

朝方は空も明るく、高いところに薄雲が広がってところどころ青空が覗くような天気だったのですが、T-2時間くらいから屋久島方面から雨雲が伸びてきて薄暗く、そして雲底低くTSC上空を覆うような状況になってきました。よく見るとところどころ、ゲリラ豪雨のように土砂降りになっていました。

T-1時間くらいから携帯電話(Softbank)の通信が輻輳してきたようで、Twitterすら満足に見られない状況になってきました。自分たちのいたところは、車の駐車スペースの制限から、人は全然多くなかったのですが、どうやらちょっと離れたところの宇宙ヶ丘公園が過密状態になっていたらしく基地局のキャパが足りなくなっていたようです。まぁ、携帯が使い物にならないので、そちらの公園が大混雑してることも自分は分からず、周りの人に教えてもらったのですが。

この頃、TSCの北側で雷が観測されたとの連絡が入り、展望台の人々の間に不安が立ちこめます。雨が降ってもロケットは打ち上がるけど、機体や通信に影響を起こしうる雷のある環境での打ち上げは行いません。液体燃料の充填が終わってスタンバイしているこの状態でもし延期が決まれば、液体燃料を全部抜いて点検を行ったあと、また機体全体をキンキンに冷やしながら燃料を注がなければなりません。そうすれば2,3日の延期は確定です。
しばらくして雷雲の問題は解消されたとの情報が入りホッと胸をなで下ろしました。

T-0.5h、もう車中泊をしてから、かれこれ待ち時間で10時間近くこの場にいて、そろそろ何のためにここに居座っているのか分からなくなってきました。いや、ロケットが打ち上がることは分かっているのですが、ずっとそこに置いてあるのを数時間眺め続けているとそれが宇宙に飛んでいくなんて思えなくなるのです。相変わらず低く黒い雲が流れ込んでいます。

T-1min
関係者っぽい人が無線機から聞こえるカウントダウンを読み上げだして緊張が高まってきました。本当に打ち上がるの?ドッキリじゃないの?って感じてしまいます。

機体の下に小さく光ったかな?と思った次の瞬間、SRB-A4機の明るい炎が噴きだし、ランチャーの背後には舞台のカーテンのように一気に水蒸気が広がります。白く輝く炎を引っ張るかのようにH2Bが加速、舞い上がった水蒸気の壁の高さをすぐに超え、あっという間に低くたなびく雲の中に吸い込まれていきました。たった10秒の出来事でした。ここまで全くの無音。


大空に伸びるロケットロードを撮影するべく構えてた結果がこれ。

ロケットが雲に飛び込み、黄色くもわっと光ると見学者から「ああ〜」「あっははー」「やっぱりだめかぁー」のような喜び8,悔しさ2くらいの声が上がりました。無事ロケットが打ち上がる場面に立ち会えたのはすごくうれしいんだけど、やっぱり飛んでいくロケットはもっと見たかったですね。
と、そんな声もやっと伝わり始めた空気の振動でかき消されました。「ロケットの燃焼音は空気を突き破る音だから、空気を振動させるスピーカーでは再現できない」と聞いていましたが、まさにその通り。バリバリという音と共に空気がドカンドカン揺れるような大音響を全身で体感しました。

音が聞こえなくなってしまうと、軌跡も見えないし完全に手持ちぶさたな状態。我に返って、あれ、これからどうすればいいんだ?となります。振り返って見れば、煙が流れて再び見えるようになったランチャーにはロケットがおらず(当然なのだが)、それを見てやっと「ああほんとに行ったんだな…」と実感して切なかったです。

しばらく呆然とした後カメラの片付けなど撤収をしていると、関係者と見られる陣営がクーラーボックスからビールを取り出し乾杯をしていました。どうやら無事HTVを切り離したタイミングだったようです。旨かろう旨かろう。

とりあえず、1人をフェリーに送り届けるために西之表港まで行き、みんなでお昼ご飯としました。

トッピーの唐揚げ。羽まで美味しい。

お土産など物色したのち、種子島観光として島をぐるっと巡りました。


秒速5センチメートル聖地巡礼をしたり。


きれいな海を満喫したり(水着持ってくればよかった!!)


ロケットのお勉強をしたりしました。

ぐるっと一周回って西之表のホテルに到着

一日中暑い中にいたもので、ビールと黒豚と大浴場の湯がとても気持ちよかったです。

打ち上げ前日は飛行機で仮眠したのみ、当日朝も車中泊、2日ぶりのお布団の気持ちよかったこと。バタンキューでした。

翌日はフェリーで鹿児島へ帰還。今度こそ青空に向けて打ち上がるロケットを見に行くぞ!と誓い合って、鹿児島中央駅で別れ、ロケット打ち上げ見学ツアーはお開きとなりました。