迎え角30deg.

上向きでも飛んでいかない日々。前に進むだけで精一杯。

いちごタルトとトロピカルパフェ

春期限定いちごタルト事件 春期限定いちごタルト事件
米澤 穂信 (2004/12/18)
東京創元社

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夏期限定トロピカルパフェ事件 夏期限定トロピカルパフェ事件
米澤 穂信 (2006/04/11)
東京創元社

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「春季限定」を読んでこのシリーズの空気に飲まれ、今日「夏季限定」を買ってきて一気に読み上げてしまいました。
最近読んでたミステリの中で最高の出来です!

恋愛関係でも依存関係でもなく、「小市民」を目指すために互恵関係を結んでいる高校生の小鳩常悟朗と小山内ゆき。そして小鳩の友人、堂島健吾を含めた3人が日常に潜んだ謎や事件と関わっていく本格ミステリ
小鳩君と小山内さんの「互恵関係」が絶妙で、この物語に流れる不思議な空気を作り上げています。

形態は短編集のようになっていますが、それぞれの話の伏線を掛け合わせて「連作長編」としての大きなミステリも仕掛けられてます。
もちろん一話一話もしっかりと組み立てられていて、謎や事件のバラエティ・さりげなく張られている伏線・それから導かれる論理的な解決と短編としても楽しめます。
読者に挑戦するような記述もあり、思わず登場人物と一緒に考えてしまいました。

「春季限定」は小鳩君中心、「夏季限定」は小山内さんオンステージといったところでしょうか。「春季限定」で思わず登場人物に感情移入してしまい、「夏季限定」に流れる大きなミステリの結末に衝撃を受けました。
キャラクター重視で物語を楽しむことも、純粋にミステリを楽しむことも出来る小説です。どちらも美味しくいただくのがいいですよ、甘いものなら。
<小山内スイーツセレクション・夏>はりんごあめより甘く、グレープフルーツのシャルロットより酸っぱいのです。

シリーズの続きで「秋季限定」や「冬季限定」も出るのだろうか。このまま続きが出ないでほしいという気もある。でも出るなら絶対に読みたい。シリーズとしては大きな飛躍が必要かもしれないが、それを乗り越えられるのならば次回作も読み応えのあるものになるだろう。

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読み終えてから、気が高ぶって眠れないんですよ。